続・各駅停車のラブソング~只今絶賛、片思い中。~

第16駅:環状線の四重奏(玲央の視点)

「ねえ結菜、今日の放課後さ、玲央も誘ってカラオケ行かない?」
教室の向こうで、茜が結菜とそんな風に話しているのが聞こえた。
茜が笑うだけで、僕の心臓は一速からトップギアまで一気に跳ね上がる。
僕の好きな人は、幼馴染の茜だ。
生まれた時からずっと一緒で、誰よりも近くにいるはずなのに、最近の茜の目は、僕の親友の和馬ばかりを追いかけている。
和馬が他の女子と話していると、茜は明らかに不機嫌になるし、和馬がぶっきらぼうに笑うと、茜はすごく嬉しそうな顔をする。
全部、知っている。
だけど僕は、気づかないフリをして「幼馴染の玲央」という安全なシートに座り続けている。
「……あ、悪い結菜。俺、放課後ちょっと用事あるからパス」
和馬がそう言って断った瞬間、隣にいた結菜の肩がピクッと跳ねて、寂しそうな顔になったのを僕は見逃さなかった。
結菜は和馬を見ていない。結菜が見ているのは――僕だ。
結菜が僕に向ける視線の熱さに、僕は気づいている。だけど、それに応えることはできない。
「なんだよ和馬、ノリ悪いなー」
僕はわざと明るい声を上げて、和馬の肩を小突いた。
みんなの視線が交差する、この狭い教室。
結菜は僕を、僕は茜を、茜は和馬を、そして和馬は……誰を見ているんだろう。
もし僕が茜に「好きだ」と言ってしまえば、この4人の心地いい電車の旅は、脱線してバラバラになってしまう。
それが怖くて、今日も僕は自分の気持ちにブレーキをかけたままだ。
夕暮れのホーム。
4人で並んで電車を待つ間、僕はそっと、茜の愛おしい横顔を見つめていた。
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