続・各駅停車のラブソング~只今絶賛、片思い中。~
第19駅:ラストランの境界線
「……ふぅ。お疲れ様、よく頑張ってくれたね」
東京行きの東海道新幹線、21時過ぎの上り列車。
3列シートの窓際と真ん中に並んで座った途端、隣の席の風間(かざま)主任がネクタイを少し緩めて息を吐いた。
社内でも「完璧で容赦ない」と恐れられる敏腕の先輩。
でも、今回の大きなプロジェクトの出張中、彼は慣れない私をずっと裏でフォローし続けてくれた。
私は、この人のことが好きだ。
だけど、彼は仕事に生きる人。私なんて、数いる部下の一人に過ぎない。
明日になればまた、オフィスという名の冷たいレールの上で「頼れる上司」と「不器用な部下」に戻ってしまう。
「主任、本当にお疲れ様でした。これ、お茶です」
「ありがとう」
缶ビールではなく、私が渡した温かいお茶を受け取ると、主任はふっと柔らかく目を細めた。
会社では絶対に見せない、無防備で優しい笑顔。それだけで、私の心臓は新幹線のスピードに負けないくらい早く脈打ち始める。
夜の車内は静かで、かすかに響く駆動音だけが二人を包んでいた。
東京までは、あと1時間。
「……なぁ」
不意に、主任の低くて少し掠れた声が耳元に届く。
見ると、主任がシートに深く背を預けたまま、じっと私を見つめていた。
いつもなら書類を鋭く見つめるその瞳が、今は熱を帯びて、ひどく甘く揺れている。
「会社に戻ったら、またただの上司の顔をしなきゃいけないの、結構しんどいんだよ」
「え……?」
「気づいてないの? 俺が君を他の奴と出張に行かせたくなくて、どれだけ裏で画策したか」
主任の大きな手が、座席の隙間で私の凍えた手をそっと包み込む。
差し込まれた指が、ゆっくりと、でも拒絶を許さない強さで私の指と絡み合った。
「東京に着くまでは、仕事の話はナシ。……いい?」
時速285キロで夜を駆け抜ける密室の中。
大人の理性が、彼の甘い熱に溶かされていく。あと1時間だけ、この特別なシートのままで――。
東京行きの東海道新幹線、21時過ぎの上り列車。
3列シートの窓際と真ん中に並んで座った途端、隣の席の風間(かざま)主任がネクタイを少し緩めて息を吐いた。
社内でも「完璧で容赦ない」と恐れられる敏腕の先輩。
でも、今回の大きなプロジェクトの出張中、彼は慣れない私をずっと裏でフォローし続けてくれた。
私は、この人のことが好きだ。
だけど、彼は仕事に生きる人。私なんて、数いる部下の一人に過ぎない。
明日になればまた、オフィスという名の冷たいレールの上で「頼れる上司」と「不器用な部下」に戻ってしまう。
「主任、本当にお疲れ様でした。これ、お茶です」
「ありがとう」
缶ビールではなく、私が渡した温かいお茶を受け取ると、主任はふっと柔らかく目を細めた。
会社では絶対に見せない、無防備で優しい笑顔。それだけで、私の心臓は新幹線のスピードに負けないくらい早く脈打ち始める。
夜の車内は静かで、かすかに響く駆動音だけが二人を包んでいた。
東京までは、あと1時間。
「……なぁ」
不意に、主任の低くて少し掠れた声が耳元に届く。
見ると、主任がシートに深く背を預けたまま、じっと私を見つめていた。
いつもなら書類を鋭く見つめるその瞳が、今は熱を帯びて、ひどく甘く揺れている。
「会社に戻ったら、またただの上司の顔をしなきゃいけないの、結構しんどいんだよ」
「え……?」
「気づいてないの? 俺が君を他の奴と出張に行かせたくなくて、どれだけ裏で画策したか」
主任の大きな手が、座席の隙間で私の凍えた手をそっと包み込む。
差し込まれた指が、ゆっくりと、でも拒絶を許さない強さで私の指と絡み合った。
「東京に着くまでは、仕事の話はナシ。……いい?」
時速285キロで夜を駆け抜ける密室の中。
大人の理性が、彼の甘い熱に溶かされていく。あと1時間だけ、この特別なシートのままで――。