母国を追われた草いじり令嬢は、敵国で『宮廷植物医』として新生活を満喫しています~元婚約者様と義妹、お元気ですか? 貴重な植物が全て枯れ、さらに私が渡した大事な園芸書を燃やした?じゃあ、もう無理ですね~

第16話:皇太子の日記②

 ラルフの執務室には、今日も羽根ペンの軋む音が響いていた。 

 ◆◆◆

 ベルナデッタが宮殿に来てから、この国の現状は目覚ましい速度で変わりつつある。
 奇病と思われた植物の異変は、実は何者かによって散布された毒によるものだと、彼女が明らかにしてくれた。
 帝国の方法では検出できないように設計された毒だ。
 つまり、一連の異変は人為的に引き起こされたものと認めざるを得ない。
 背後にいる人間を暴くため、より綿密な調査を進めていく。

 毒の検出だけでも大変な功績だが、ベルナデッタはさらに力を振るった。
 国内最大の穀倉地帯をわずか一週間ほどで完全に回復させてしまったのだ。
 見渡す限りの金穂麦が風に揺れる光景はこの世のものとは思えないほど美しく、リーベルの樹が復活したときと同じ感慨を覚えた。
 帝国は転換点を迎えたのだ。
 たった一人で国を変えつつあるベルナデッタには感謝してもしきれず、深く敬意を表する。
 また、献身的でひたむきな彼女を見ていると、私の心に何かが芽吹いたような不思議な感覚があった。
 何かは不明なものの、ベルナデッタと過ごしていればいずれ理解できる気がする。


 ◆◆◆

 羽根ペンを置くラルフは空を見る。
 金穂麦と同じように、金色に輝く月が夜空に映えた。
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