母国を追われた草いじり令嬢は、敵国で『宮廷植物医』として新生活を満喫しています~元婚約者様と義妹、お元気ですか? 貴重な植物が全て枯れ、さらに私が渡した大事な園芸書を燃やした?じゃあ、もう無理ですね~

第35話:宮廷植物医、植物博覧会を開催する②

 突然の襲来に、会場にはどよめきが広がる。
 ベルナデッタも他の者たちと同じように上空を注視していたが、堕天使の顔がはっきりしてくるにつれて驚きに包まれた。

「ギルアン様に……セリーヌ……?」

 間違いなく、彼女を婚約破棄して国外追放したあの二人だった。
 衝撃を受けるベルナデッタと同じように、フレデリックも堕天使の正体に驚き叫ぶ。

「ど、どうして貴様らがここにいる! 拘禁塔に収容しているはずだ!」
「ははは、こんにちは、父上。あんな塔など僕たちの力の前では張りぼて同然ですよ」
「次からはもっと強力な塔をご用意くださいませ。魔法封じの腕輪もね」

 ギルアンとセリーヌは高笑いする。
 アトラ王国において、拘禁塔の頑強さはよく知られていた。
 理由は不明だが、魔法封じの腕輪さえも破壊してこの場に来たらしいとわかった。
 一同が警戒を高める中、ラルフは迅速に分析した結果をベルナデッタに共有する。

「彼らの翼は闇魔法によるものだ。あの二人は魔法に精通した人物なのか?」
「い、いえ、私の知る限り二人ともそれほど得意ではありませんでした」
「ふむ……」

 何事かを思案する彼に対し、ベルナデッタは心臓がひやりと鼓動した。

(まさか、闇魔法なんて……!)

 封印されるほど危険な存在で、扱うことは禁忌とされている。
 どうしてそんな魔法を、と考える彼女に、ギルアンとセリーヌは不敵に笑いかけた。

「ベルナデッタ、君のおかげで僕たちは大変な目に遭ったんだよ。責任を取ってくれないか?」
「お義姉様に直接やり返す機会があってよかったですわ」

 あまりにも甚だしい逆恨みに呆れてしまった。
 二人は両手を挙げ魔力を集める。

「「消えてなくなれ!」」

 黒く巨大な火球が放たれた。
 咄嗟に、ベルナデッタはラルフに抱き寄せられる。

「私の傍から離れるな!」

 見た目以上に強い力
 即座にドーム状の結界が展開され、黒い火球をいとも簡単に防いだ。
 上空を飛ぶギルアンは悪態を吐く。

「だったら、もっと強い攻撃を……ぐわぁっ!」

 直後、ラルフの魔法弾が目に留まらぬ速さで二人の翼を打ち抜いた。
 落下する二人があわや地面に激突する寸前、さらに魔法の網で拘束。
 暴れる前に締め上げて気絶させてしまった。
 たちまち、会場には拍手喝采が湧く。
 ホッとするのは誰よりもベルナデッタだ。

「さすがは殿下ですね。闇魔法の攻撃をいとも簡単に防いでしまうなんて」
「何があっても君だけは守るさ……絶対にな」

 まだラルフの腕の中にいる。
 危機は去ったが、もう少しこうしていたいと思うのだった。
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