仕立て屋の秘密の採寸~冷徹な投資銀行家が、試着室でネクタイを解くとき~
「あ……」
「君は俺の身体を測っているとき、いつもなにを考え、どんな目で見ている?」
どういう意味かと彼を見上げると、そこにはいつもの冷静な〝高瀬様〟の姿はなかった。いるのは熱を帯びた目で私を見つめ、少しだけ呼吸を荒くしている彼だ。
「わ、私はフィッターとして、高瀬様のお身体を美しく見せるために……」
「嘘だな」
彼は、低いけれど優しい声で私の言葉を遮る。それは私の鼓動を、さらに速くさせた。
「君の目が、ただの職人のものではないことぐらいわかっていた。俺のことを意識して、俺の身体をその目で味わっていただろう」
「そ、それは……」
隠していたつもりだった下心を見透かされた羞恥心で、顔がカッと熱くなる。
まさか、見抜かれていたなんて……。
見つめられたまま彼に迫られて、フィッティングルールの鏡に背中が触れた。逃げ場のない、まさしく背水の陣だ。
すると彼は私が魂を込めて作った最高級のジャケットを自ら丁寧に脱ぎ、それをハンガーにかけた。ネクタイを解きシャツ一枚の姿になると、私の両肩をそっと包み込んだ。