独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。

第29話 救いようのない奴


 将吾が翼をナイトクラブに誘った。

 なんでその場にもいなかった私が知っているのか。
 
 ——それは自分が提案したことだったから

 *

 大学の屋外喫煙所で電子タバコを吸っていると見知った顔がこちらに近づき声をかけてくる。
 いかにも素行の悪そうなその男は、ポケットからタバコを取り出し火をつける。

「よぉ、由紀。お前がこの前、翼が病んでるって言ってたから気晴らしにクラブ連れてったけどよ。アイツ途中でどっか消えたぞ」
「へぇ?どこに?」
「しらねぇよ、戻っても来なかったしな。けど今日大学で見たら吹っ切れたみたいに調子戻ってたぞ」

 将吾の言葉に目を細めた。
 吹っ切れた?翼が1人で立ち直ったってこと?
 
 (あり得ない。)
 
 ……優斗が美咲を離すはずがない。

 彼の身に何が起きたのか考えるが、答えは思いつかなかった。
 将吾はつまらないとでもいうように口元を下げ、半分閉じたような目で話し続ける。
 
「ムカつくよなぁー。あんな見た目して馬鹿みたいに1人の女をずっと追いかけて、見ててイライラする。だから壊してやろうと思って誘ったのによ」

 さらりと下衆な事を言う将吾に不快感を感じた。
 ここまで腐った男は見ていて気分が悪い。
 
 由紀はわずかに眉を下げた。
 将吾は見逃すことなく由紀に呟く。

「……俺の言葉が不快みたいだな?ハッ!まるで自分は違うとでも思いたいのかよ。……お前が、俺に翼を誘うように仕向けたくせにか?」
 
 由紀は何も言えなかった。
 本当のことだから。
 将吾を不快に思うことなんて自分には許されない。
 私はコイツと同類だ。

「お前のそういう汚いところは嫌いじゃない。」
 
「それでもっと女っぽさがあれば抱いてやったのによぉ」
 
 気持ち悪い視線が由紀の体をなぞる。
 吐き気を感じる将吾の行動に必死に耐えた。

「俺は性別が女でも男を抱く趣味はねぇからな」

 冷たく履き捨てられた言葉。
 由紀の心に冷たく刃を突き刺す。
 こっちだってお前なんかお断りだ。
 とにかくこの場を早く離れたかった。

 由紀はタバコを片付け、外へと足を向ける。
 後ろで将吾が言った。

「なぁ由紀。()()良い情報あったら言ってこいよ。共犯者になってやるからよぉ?」

 反吐が出る。

 将吾にも自分にも。
 
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