独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 
「あーーー!!ドラムのイケメンさん!」
 
 都の興奮に由紀も翼も肩を跳ねさせる。
 嬉しそうに隣の椅子をずらして「どうぞ!」と由紀をテーブルに誘った。

「あ、……どうも」
 由紀は都に促されるまま椅子へ座る。
 そんなつもりはなかったのに、都の嬉しそうな顔に断る事ができなかった。

「前からライブでみてて!ほんと素敵です!」
「あ……ありがとう。でも、私女だから」
「?知ってますよ?」

 由紀は驚いたように目を見開く。
「え、あ、美咲から聞いたの?」
「何も!でも見たらなんとなく雰囲気でわかりますし、それに私、顔が好みだったら男とか女とかどうでもいいんですよね!」

 平然と自身の好みを晒す彼女に由紀は衝撃を受けた。

「……性別は大切じゃない?」
「え、だってたまたま好きになったのが男だろうが女だろうがその人自身が好きなんだからよくないですか?私は顔の好みから男が多いですけど好みなら全然女性でも気にならないですね」
 
 由紀は信じられなかった。
 
 こんな人がいるなんて、と。
 美咲も由紀を肯定してくれたが受け入れてくれるわけではなかった。
 でもこの子は、自分が好きなら関係ないと本当の意味で全てを受け止めると言っている。

 都はふと自分の言ったことに気づいたように声のトーンを下げて謝った。

「あ……気持ち悪いですよね。あはは」

 都は気まずそうにこめかみに手を添える。
 
「……こんなこと言ってるから友達にも変って言われるし。……恋人もできないんですよ!でも美咲だけはわかってくれたからいいんです」

 都は由紀と一緒だった。
 
 自分の感覚に悩み、【普通】という言葉に振り回されて生きてきたんだ、と。
 
 それでも彼女は由紀のようになる事なく、強く自分を持って歩き、美咲に(すが)るのではなく、良き友人として隣に立っている。
 
 
 由紀は心臓を掴まれたようだった。
 
 美咲や翼に対して感じたものとは違う、純粋な感情が由紀を包む。

 
 (——胸の奥が静かに熱い)

 
 都は由紀の熱い視線に恥ずかしそうに目を泳がしている。

 由紀は一気に世界が色付いた気分だった。
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