独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
第32話 昨日の敵は今日の友
「……名前、聞いてもいい?」
「あ、矢吹都です!美咲の友達で……翼くんとはこの前たまたま仲良くなって」
由紀は今まで見た事ないような輝く笑顔で都に微笑む。
「都ちゃん、良かったら私とも友達になってくれないかな?」
「眩しっ……イケメンすぎる……でも私さっき話した通り、ちょっとその、恋愛感覚が……」
「私と友達になってくれたら好きなだけこの顔面眺めてくれていいよ?」
「よろしくお願いします。」
都は業者のようなスピードで連絡先を差し出した。
由紀も満足そうにそれをスマホで読み込む。
由紀の見たことのない幸せそうな表情に翼は顔を引き攣らせていた。
「お前……顔が気持ち悪いぞ」
「美咲のこと教えてやろうと思ったのにやめるよ?」
「何か知ってるのか!?」
翼は机から身を乗り出すように由紀に問いかける。
彼女は自分のした事を思い出し、一瞬気まずそうに目をそらすが、そらした先にいた都を見て逃げる事をやめる。
——覚悟を決めた。
「その前に、話さないといけない事がある。」
由紀の深刻な様子に都は何か察した。
これは自分がいない方がいい気がする。
「あ、私今日は帰るね。この後バイトもあるし!翼くんまたね!由紀さんも……」
「都ちゃん、ありがとう。……後で連絡するね?」
由紀の笑顔に都は溶ける。
崩壊した表情を戻してなんとか人間の形を保つ。
「は、はい……!」
都は全力で手を振り、その場を去っていった。