独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
第36話 許さないから
2人きりの部屋。
ずっと過ごしてきたリビングはかつてないほどの気まずさに満たされ、言葉を止める。
「……座る……?」
勇気を出して一言、優斗にかけると
「いや……いいよ」
と彼は目をそらしたまま美咲に返した。
……なんて言ったらいいんだろう。
優斗をあんな風にしてしまったのは私が甘えたからだ。
彼にも非はあるが、もっと自分がしっかりしていればと思わずにいられない。
「……ありがとう」
自然と感謝の言葉が口から出た。
思いもしなかったのか優斗は驚いて顔を上げている。
その顔には なんで と書いてあった。
「優斗が、そばにいてくれたから苦しくなかったし、いろんなことを忘れて幸せな気持ちに浸ることができた……。考えることも全部優斗に任せて、楽してた。」
私は優斗に甘えて、依存していた。
「怖いとかなんでとか思うこともされたけど……それ以上に感謝、してる」
「なんだよそれ……。」
優斗は瞳を揺らし、吐き出すように美咲に言った。
「俺は!美咲が弱ってるところに付け込んで自分のものにしようとしただけだ!」
「翼を忘れなくていいって言いながら早く忘れるように必死だった!」
優斗の中に溜めていた言葉はしっかりと美咲に伝わっている。
「うん」
「側にいたくてGPSも仕込んだ、勝手に連絡先も消したし、美咲が何も考えないように……触れ続けた」
「……うん」
「さっきだって酷いことをした!……なんで許そうとするんだよ」
苛立ちと苦しみを帯びた声が叫ぶ。
「まだ、美咲と一緒にいていいんだって勘違いするだろ!」
頬を伝う1つ粒の涙。
これで終わりだと、優斗はわかっていた。
だからこそ美咲に酷く罵られて想いを断ち切れたらと願っていた。
「嫌だよ。」
自分の意思なく流される彼女はもういなかった。
「私たちから離れようとするなんて許さない」
「1人で逃げようなんて許さないから」
強く、真っ直ぐ、本気で優斗を掴む。
「恋人にはなれないけど、友人として仲間として側にいてよ。」
「優斗がいないと、私も笑いたくても笑えないよ。」
そう言って困ったように笑う彼女はとても
——あの部室で見たように魅力的だった。