独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 *

 (翼……いない。)

 美咲はスタジオ内を歩いて探して回る。
 トイレ付近、自販機、受付。
 全て探したが翼はいなかった。
 20歳になったと同時にライブ仲間に誘われるように喫煙し始めた彼はイライラしたり、落ち込むとタバコを吸う癖が出来た。
 もしかしたらと、スタジオから外に出てすぐそばの路地にある喫煙所を覗く。
 予想通り、翼は誰もいない喫煙所の中、1人でタバコを吸っていた。
「やっぱり……」
 美咲は彼をスタジオに呼び戻すため、葉っぱの燃えた匂いが漂う喫煙所に足を踏み入れる。
 
「翼」
 
 彼は声に反応して顔を少し美咲に向けるが、すぐに戻してしまう。
「……優斗は」
「もうスタジオ戻ったよ、時間なくなっちゃうし早く戻ろう」
 美咲は翼に近づき、自分の腰に手を当てどっしりと力強く彼の前に立った。
 翼のタバコの煙が美咲の喉を刺激してゴホッと少し()せてしまう。

「っ!悪い」
 美咲の咳にハッとした翼はすぐに灰皿で火を消した。
 終えたタバコを灰皿に入れ、美咲は動くかと思ったが翼は何か考えるように地面を見つめて動かない。
「……」
「……?」
 様子を見て待ってみても、そこから動こうとはせず翼は路地の壁にしゃがみ込む。
 
「ちょっと……!つばさー立ってー!」
 こんなことをしていたらあと1時間もなかったスタジオの時間が終わってしまう。
 美咲は翼の手を握って起き上げようと引っ張るが、体格が全く違う翼はびくともしない。
 それでも必死に「んーーっ!」と言いながら頑張っていると、逆にそのまま腕を引き込まれて翼の胸に飛び込んだ。
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