独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
第2話 4人組バンド【Suit】
視線を逸らすように、顔を横に向けて拗ねる翼は反論する。
「なんだよ、仕方ないだろ。噛みたくなるんだから」
通用するわけがない反論に、美咲も負けじと言い返した。
「噛みたくなるから噛むって言い訳が通用してたら警察いらないでしょ!」
「……美咲も本気で突き放しはしないだろ」
「それは……」と言葉が詰まる。
確かに、強く抵抗しない自分にも非はあった。
でもそれには理由がある。
「昔強く突き放して翼が首を大怪我しちゃったから……」
翼の首にある古傷。
太い線のような傷は美咲が翼を突き放した際、石に当たって切れてしまったものだった。
血の気が全て引いた、翼の首が赤く染まって——
美咲はその光景を忘れられなかった。
自分が突き放したせいだと、今も罪悪感を持っている。
「……とにかく、噛まないように意識して!あんまり噛み続けるなら距離とるからね」
このままでいるのは翼にとってもよくない。
ちゃんと意識させないと、美咲はいつもより強めに注意した。
「それは……気を付ける」
翼も美咲に距離を取られるのは耐えられないのか、しょんぼりと頭を下げた。
「んっ。」
この話はおしまい、と怒ることをやめて美咲は辺りを見回す。
後ろの噴水からは水が吹き出し、霧になった水飛沫がヒヤリと美咲の肌を優しく冷やす。
春先の公園は涼しく、花壇に植えられた色鮮やかな花が甘く華やかな香りを漂わせている。
「優斗と由紀、まだかな」
あの2人が遅刻することなんてほとんど、いや、1回も見たことがなかった。
ショートパンツのポケットからスマホを取り出し確認するが、メッセージはない。
約束の11時までもう1分もない。
「あいつら、デートか?」
「え!あの2人付き合ってたの?!」
高校の時からずっと2人を見てきたが、そんな素振りは全くなかった。
でも美男美女でお似合いかもしれない。
「……ないな。ない。」
翼は一瞬考えたように黙るがすぐに否定した。
「大体、由紀に関しては男が好きかどうかも怪しいだろ」
「それはちょっと失礼じゃないかい?」
とても馴染みのある中性的な声が聞こえた。
ゆっくりと噴水へと向かってくるショートカットの女性。
女性と知っていなければ男性と間違えられてもおかしくないその姿は、王子様のようなのにどこか気だるげな雰囲気も漂う。
ぱぁあと表情を明るくさせて女性に抱きつく美咲。
「由紀ー!」
「美咲、お待たせ」
中里由紀。
彼女は高校の時からの友人で、大学からはバント仲間でもある。
翼といることの多かった美咲は、彼と関わりのある人達と仲良くなることも多い。
由紀とは軽音部のライブや翼に呼ばれて入った部室で何度も会い、気づけば美咲にとって親友と呼べる友人になっていた。
2人は再会を喜ぶように抱き合う。
「本当、そこら辺の男よりかっこいいよね由紀」
「ふふ、ありがとう。男になりたいわけではないんだけどね」
美咲は嬉しそうに微笑む。
「知ってる。私は由紀の由紀らしさが好きだからいいと思う」
由紀は美咲の笑顔を愛おしく見つめていた。
そんな2人の世界を面白くないと翼は思う。
美咲と自分の空間によそ者が入ってくるのは気に食わない。
バンドのメンバーじゃなかったらキレている。
「なんだよ、仕方ないだろ。噛みたくなるんだから」
通用するわけがない反論に、美咲も負けじと言い返した。
「噛みたくなるから噛むって言い訳が通用してたら警察いらないでしょ!」
「……美咲も本気で突き放しはしないだろ」
「それは……」と言葉が詰まる。
確かに、強く抵抗しない自分にも非はあった。
でもそれには理由がある。
「昔強く突き放して翼が首を大怪我しちゃったから……」
翼の首にある古傷。
太い線のような傷は美咲が翼を突き放した際、石に当たって切れてしまったものだった。
血の気が全て引いた、翼の首が赤く染まって——
美咲はその光景を忘れられなかった。
自分が突き放したせいだと、今も罪悪感を持っている。
「……とにかく、噛まないように意識して!あんまり噛み続けるなら距離とるからね」
このままでいるのは翼にとってもよくない。
ちゃんと意識させないと、美咲はいつもより強めに注意した。
「それは……気を付ける」
翼も美咲に距離を取られるのは耐えられないのか、しょんぼりと頭を下げた。
「んっ。」
この話はおしまい、と怒ることをやめて美咲は辺りを見回す。
後ろの噴水からは水が吹き出し、霧になった水飛沫がヒヤリと美咲の肌を優しく冷やす。
春先の公園は涼しく、花壇に植えられた色鮮やかな花が甘く華やかな香りを漂わせている。
「優斗と由紀、まだかな」
あの2人が遅刻することなんてほとんど、いや、1回も見たことがなかった。
ショートパンツのポケットからスマホを取り出し確認するが、メッセージはない。
約束の11時までもう1分もない。
「あいつら、デートか?」
「え!あの2人付き合ってたの?!」
高校の時からずっと2人を見てきたが、そんな素振りは全くなかった。
でも美男美女でお似合いかもしれない。
「……ないな。ない。」
翼は一瞬考えたように黙るがすぐに否定した。
「大体、由紀に関しては男が好きかどうかも怪しいだろ」
「それはちょっと失礼じゃないかい?」
とても馴染みのある中性的な声が聞こえた。
ゆっくりと噴水へと向かってくるショートカットの女性。
女性と知っていなければ男性と間違えられてもおかしくないその姿は、王子様のようなのにどこか気だるげな雰囲気も漂う。
ぱぁあと表情を明るくさせて女性に抱きつく美咲。
「由紀ー!」
「美咲、お待たせ」
中里由紀。
彼女は高校の時からの友人で、大学からはバント仲間でもある。
翼といることの多かった美咲は、彼と関わりのある人達と仲良くなることも多い。
由紀とは軽音部のライブや翼に呼ばれて入った部室で何度も会い、気づけば美咲にとって親友と呼べる友人になっていた。
2人は再会を喜ぶように抱き合う。
「本当、そこら辺の男よりかっこいいよね由紀」
「ふふ、ありがとう。男になりたいわけではないんだけどね」
美咲は嬉しそうに微笑む。
「知ってる。私は由紀の由紀らしさが好きだからいいと思う」
由紀は美咲の笑顔を愛おしく見つめていた。
そんな2人の世界を面白くないと翼は思う。
美咲と自分の空間によそ者が入ってくるのは気に食わない。
バンドのメンバーじゃなかったらキレている。