独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
「翼に大好きって言われるとドキドキして、嬉しいと思うのに……翼と向き合うことで私が無くなってしまいそうで、怖い」
 彼のことを意識している。
 自分でもわかっていた。
 それでも、彼の自己中心的で独占欲の強い愛は美咲の心にブレーキをかける。
「もっと私の気持ちも聞いて欲しくて噛むのもやめてって話してるのに、やめてくれないし……さっきだって勝手にキスしてきて……」

 美咲の思考が停止する。
 
「……あ。」
 言う必要のないこともまで言ってしまった自分の失言に思わず言葉が漏れた。
 沈黙。
 何も言わない由紀の顔を見るのが恐ろしくて、目を反対へゆっくり向ける。
 
「……キス、されたの?」
 由紀のとても低いトーンの声に体の熱がスゥーっと引いていく。
 見ていなくてもわかってしまう位、隣に座る由紀から静かな怒りのオーラを感じた。

「……へぇ?」
 由紀は短い言葉で話す。
 その一言にはいろんな意味を含ませている気がして美咲はダラダラと汗をかいて止まらない。
「ゆ、由紀……い、今の話は……」
「大丈夫、誰にも言わないよ」
 キラキラと輝く王子様のように作り笑いを顔に貼り付ける由紀は怖かった。

 そんなことより、と由紀は言葉を続ける。
「美咲は、……大丈夫?」
 心配そうに顔を覗きこむ由紀に美咲は温かさを感じて微笑む。
「……うん。由紀のおかげで、もう大丈夫!」
 本当はまだ引きずっているけれど、さっきよりはだいぶ良くなった。

「よかった」と微笑む由紀。
 辺りは暗くなりだした空を見て、「そろそろ帰ろうか」と由紀の言葉に美咲は「うん」と言葉を返した。
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