独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 初めてベースに触れた時、こんなに弦が硬いと思っていなかった俺はちょっと不安になった。
 フェスで見たアーティストたちはまるでゆるい紐を押さえるみたいに軽々と指を動かしていたのに。
 うまく弦を弾けなくてもたついていたら会ってそんなに経ってもいないのに、翼は俺に向かって「完全な初心者かよ」って小さく呟いた。
 
「……は?」
 アイツの言動は俺の口角を痙攣させた。
 自分だって指に沢山テーピングを巻いているくせに。
 まだ始めたばかりでお前だってそんなに上手くないだろって思ってたから。
 予想より上手かった翼のギターに俺はもっとムカついた。
「っ……」

 学校からの帰り道、俺は迷うことなくその店に向かった。
 
 店内には楽器本体やアクセサリー、楽譜と備品等々。
 音楽に関する物がフロアを独占していた。
 うろうろとベースの前を歩き回っていると店員の男性に声をかけられる。
『楽器、お探しですか?』
『ぁ……初心者なんですけど、ベースを探してて』
『それなら——』

 そのまま楽器屋で自分用のベースを買った。
 貯めたお小遣いはほとんど使い切ったけど気にならなかった。
 練習して絶対あのムカつく野郎より上手くなってやる、そればかり考えていたから。
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