独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 美咲の表情は暗い。
 これ以上は詮索しない方が良さそうだと思い、会話を切り替える。
『……そう。まぁ、あれだけ執着の強い男に好かれて大変だね』
 俺は手当の終わった指を開いたり閉じたりして感触を確かめる。

『でも、翼は本当に私を好きで言ってくれてるってわかってるから。幼馴染だし、性格もよく知ってる。……なんていうか……好きって難しいね!』
 そう言って困ったように笑う彼女はとても
 
 魅力的だった。




 あの日から、無意識に美咲を追ってしまう自分がいた。
 美咲の愛嬌のある笑顔や仕草、優しいところ鈍いところ。
 翼が会うたびに彼女を噛んだ。
 それに一生懸命抗議する美咲の表情はコロコロと変わり、俺の庇護欲を誘った。
 
 (……美咲、また翼と言い合いしてる)

 翼と喧嘩する彼女を。
 ライブで嬉しそうに最前で曲を聴く彼女を。
 校内ですれ違うと必ず手を振ってくれる彼女を。
 美咲を見つけるたびに全部が愛おしく、抱きしめたくなった。

 俺は自分の気持ちが誰にもバレないように隠し通した。
 仲が特別いいわけでもないけど嫌いにもなれない翼のために
 すでに悩みを抱えている美咲をこれ以上困らせないために
 

 溢れ出そうになる自分の感情を隠して生きてきた。
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