独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 *


「……優斗?」
「ん?」
「……猫カフェ、行きたかったならそう言えばいいのに」

 片手に猫のおもちゃを持ちながら、美咲はたくさんの猫に囲まれていた。
 隣に座る優斗は楽しそうに猫を撫で回している。
「デートだから、楽しまないと」
「それは……そうなのかな?」
「うん。デートのためのデートって言っただろ?」
「……うん???」
 デートのためのデートってなんだろう。

 (土曜日遊ぶために今この時間が必要ってことだよね?……ん???)

 ややこしくて頭の紐がぐるぐるとこんがらがる。
 美咲の頭の上にはハテナがいっぱいだった。

「そもそも土曜日は妹ちゃんの誕生日プレゼントを選びに行くだけでデートでは……」
「デートだよ」
 優斗ははっきりと断言する。
「俺はデートしようって言っただろ?」

 その視線は何か意味を帯びているように熱い。
 異性として意識したことなんてなかった。
 なのに、今の優斗の姿はとても——男の人に見えた。

 美咲は戸惑い、視線をずらす。

 変な空気になんて答えようか困っていると、美咲の膝の上にすりすりと一匹の猫がやってくる。
 可愛くて撫でていると猫はじゃれ付くように美咲の指を噛んだ。
 
「あはは、可愛い。翼みたい」
 いつも美咲に噛み付いてきた翼のような猫が愛おしくて、彼を思い出して笑みを溢した。
 美咲の言葉に優斗の表情は歪み、彼女に対する独占欲が滲み出るようにその猫を強く見つめた。
「そろそろ出ようか」
「あ、うん」
 優斗は美咲に戯れていた猫を膝から降ろし、彼女をエスコートする。
 

 優斗に違和感を感じていた。

 体についた毛をコロコロローラーで取りながら、困惑した面持ちで聞く。
「……なんか優斗、今日変だよ?」
「そう?」
「急に私の手握ったり、なんか変に優しかったり……なんか」
「うん?」
 優斗は優しく微笑む。
 美咲はこれ以上聞くのが怖くなって、言うのをやめた。

「ううん、なんでもない」

「……」
 美咲が何を言おうとしたのか、優斗は気づいていた。
 今はまだ美咲も自分の変化に戸惑っているとわかっていた。
 だから今はそれでいい。
 
 もっと、もっと俺を意識して。
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