独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
第10話 中里由紀
翼と話した後、由紀は講義室を出て廊下の壁にもたれかかる。
スマホを取り出し、トークを開いて考えていた文字を打ち込んだ。
[美咲、翼と仲直りしたらしいよ。翼もご機嫌だった。月末のライブのことだけど——]
世間話のように彼らの近況を優斗に伝える。
優斗はもっと焦るべきだ。
翼の身勝手さが落ち着いてしまえば美咲は彼を受け入れるだろう。
(……2人だけが幸せになるなんて——)
由紀は苦しいのか、嬉しいのかわからないような複雑な表情で笑う。
表情に戻し、スマホをしまうと知らない女子が声をかけてきた。
「あ、あの!」
「……何?」
「い、いつも見てて……良かったら連絡先、教えてもらえませんか!」
あぁ、また か。
「……いいけど、女だってわかってる?」
女子は驚くように固まった。
ほら、知らずに皮だけを追いかけるから。
由紀は追い討ちをかけるように自分を指さす。
「性別、女」
衝撃の事実に戸惑うように彼女は「ごめんなさい!」と言い残し、友人達の元に戻っていった。
離れていても彼女達が「嘘!女だったの?!」「ありえない!」と話す声が聞こえてため息が出る。