独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。

第11話 見てないふり


 猫カフェを出て、美咲と優斗はゆっくりと街を散策する。
 この後どうするつもりなのか、全く予定の知らない美咲はチラチラと優斗の様子をうかがっていた。

「……この後、どうしよっか?」
「どうしようか……港に夜景でも見にいく?」
「いいけど、明日も大学だし早めに帰ってやることもしなきゃ」
「……うん」

 優斗はそのまま黙ってしまった。

「……?」

 どうするか考えていると、優斗が会いに来た理由を聞いていなかったと気付く。

「そういえば土曜日のことで話があるって言ってたけど、どうしたの?」
「あぁ……ごめん、予定を変えたくて」
「誕生日プレゼントを探すのは中止?」
「うん、実は……その日先輩のライブがあるんだけど」
「うん」
「ベースが怪我して、代わりに出てほしいって頼まれて……」
 優斗はとても申し訳なさそうだった。
 
「なんだそういうこと?全然いいよ!」
「ありがとう。15時にはライブハウス入らないといけないけど、それまでは動けるから」
「わかった!じゃあ15時に解散かな?」
「いや……よかったらそのライブ、見にこない?」

 美咲は嬉しそうに手を叩く。
「いいの?!」
「うん、チケットあるから。美咲さえ良ければ」
「ありがとう!優斗のベースの音好きだから聴きたい!」

 嬉しそうに話す美咲の姿に優斗は胸が温かくなった。
 つい、手を握りそうになるが耐える。

「デートの時間が短くなったから今日はその時間分のデート」
「あはは!そういうことかぁ、じゃあプレゼント探しに行く?」
「いや、もういいよ」
 
 機嫌の良さそうな優斗、その指はトントンと奏でるように動く。
 彼の髪を風が優しく撫で、揺れる。
 
 
「今は美咲との時間を楽しみたい」

 言葉に含まれた好意。
 それがわからないほど、彼女は鈍感じゃなかった。

 急に近くなった距離。
 積極的な誘い。
 意味深な言葉。
 
 ……まるで私のことを——
 
 美咲は優斗の顔を見られなかった。
 見てしまったら、今の関係が終わってしまうような気がしたから。
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