独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 *

 
 翼は講義を終えた後、1人休憩室で課題に向き合っていた。
 ペンをくるくる回すだけでレポート用紙は白紙。
 
 土曜日まであと数日、2人のデートが気になって仕方ない。
 美咲に邪魔するなと言われた手前、どうにも出来ずモヤモヤしたまま。
 集中力は壊滅的、課題が進まない。

 椅子にもたれかかって背中をグイっと後ろに伸ばす。
 前脚が少し浮くが、椅子の後脚だけでバランスをとった。
 そのまま目も閉じる。

「あーーーーー……」

 
 モヤモヤする。
 美咲は今何しているだろうか。
 会いたい。

「お、翼じゃん!」
「……将吾」

 浮いていた椅子をもとに戻し、横目で振り返ると高校時代から部活仲間の将吾が女連れで話しかけてきていた。
 将吾は友人としては悪い奴じゃないが、酒が大好きで女癖も悪い。

「何してんの?」
「課題」
「げぇー……そんなことより翼、土曜空いてねぇの?」
「空いてねぇ、予定はねぇ」
「どっちだよ。ライブのチケット買ってくんね?あと一枚なんだよ」
「あー?」

 ライブハウスでライブをする時、出演者にはチケットを売るノルマがある。
 ノルマが達成できなければ、余った分は自腹。
 気持ちがよくわかる翼は無下(むげ)にできず悩む。
 
 土曜日は美咲と優斗のデートが……
 
 だからといって翼にできることは何もない。
 いっそ、音楽に浸かっていた方が気も紛れるかもしれない。

「……いいけど」
「マジ!?助かるわー!」

 翼は将吾からチケットを買った。
 そのチケットが優斗の出るライブだと知らずに。

 
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