独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
第12話 無防備な姿
[翼、家にいる?]
スマホで翼にメッセージを送った。
翼の家は美咲の家から徒歩で5分くらいのところにある。
大学に上がっても実家から出ていない2人。
幼馴染で親同士の繋がりも長く、お土産やお裾分けは日常だった。
「翼くん家にいるって?」
「まだ返信来てなーい」
リビングのソファーで転がっている美咲の返事に母親は「うーん、どうしよう」と困り顔。
「翼のママは?」
「実家に今日は行ってるらしくて、翼くんに渡しておいてほしいって言われたんだけど……」
スマホに表示された翼ママのメッセージを見ながら、母は「んー……」と唸っている。
「そんな急いで渡さないといけないものなの?」
「熊本のおばあちゃんから送られてきた梨なのよ。痛む前に渡したくて」
「ふーん」
お風呂も済ませ心地よくゴロゴロしていたので、正直ここから動きたくないけれど、梨は翼の好物だった。
毎年、お裾分けしているうちの梨を楽しみにしていると前に翼ママから聞いたことがある。
「家近いし、私持って行ってみようか?」
「本当?お母さんもう樹迎えにいかないと行けなくて。お願いしてもいい?」
「いいよ。ちょっとスウェットに着替えてくるー」
涼しげなショートパンツから長いスウェットパンツに履き替え、梨を詰めた袋を持って美咲は玄関に向かう。
「暗いから、気をつけて帰ってきてねー」
「家から5分くらいの距離だよ?大丈夫〜」
カチャン——
家の鍵を閉め、夜道を歩く。
夜の空気は静かで冷たく澄んでいて気持ちが良い。
独特な世界を感じられる夜が美咲は好きだった。
「〜♫」
風呂上がりの体で夜風に当たる、いつもしない行動にほんの少しだけ非日常感。
なんだかわくわくした。
周りに聞こえないくらい小さな声でご機嫌に曲を口ずさむ。
ポコッ——
気持ち良く歌っていると通知音が美咲のポケットで鳴った。
[悪い、風呂入ってた。いるけどどうした?]
トントントンッと返信を画面に打ち込み、
[うちのお母さんが梨渡したかったみたいで、私が持って今翼の家向かってる]
打ち終えるとまた歩みを進める。