独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 もうすぐ翼の家だった。
 インターホンを押そうと指を近づけると、家の中から人の急いで歩き回るような騒音が聞こえて指を止める。
 翼が家の中でドタドタと走り回っているようだった。

 (なんか、焦らせたかも……)
 
 申し訳なくて指を下ろすと同時に玄関の扉が開いた。
「っ!美咲?!もう着いて……っこんな夜に1人で歩いたら危ないだろ!」
 翼は急いで支度をしたのか頭は濡れたまま、服も焦ったのか乱れている。
 この前の自分を見ているようだった。

「近所だし大丈夫だよ!はい!翼の好きな梨!」
 ふふんとちょっとだけ誇らしげに梨の入った袋を差し出す。
 翼は「近所でも危ないだろ……梨、ありがとう」と心配を呟きながらも嬉しそうに受け取った。

「じゃ、帰るね」
「え!」
「え?」
「送ってく」
「いいよ。つばさ頭濡れてるし、風邪引くよ」
「ダメだ!」
 一切引く様子のない翼。
 こうなると絶対引かないのを知っていた美咲はすぐに諦めて「じゃあ」と続ける。

「せめて頭乾かしてからね」
「わかった。うちのリビングに居て」
「え、でも……」
 
 美咲の言葉を待たず、翼は美咲の腕を引っ張って家の中に入れた。

「ちょっと!」
「うちの親、今いないから。気にしなくていい」
「えー……じゃあ、お邪魔します……」

 室内はとても静かだった。
 いつも明るく話してくれる翼のママの声も今日は聞こえない。
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