独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
第14話 静かな独占欲
(言いすぎたかな……)
翼の家を出た美咲は翼の様子が気に掛かる。
自分が突き放したくせに。
そう思うのに、翼が気になって仕方なかった。
……付き合うと言ってあげればよかった?
でも今付き合ったとして、美咲は彼の望む2人だけの世界に応えてあげられる自信がなかった。
由紀、優斗、学校の友達やバイト仲間。
翼だけ ではなく 翼と一緒 にこれからを歩んでいきたい。
「……ごめん、翼」
自分の言った言葉の意味が、いつか翼へ伝わりますように。
伝わったその時には、今度こそ笑顔で翼と向き合いたいと思った。
*
土曜日。
優斗との約束の日。
美咲は待ち合わせ場所へ向かっていた。
地下鉄を出て階段を下り、開店前の地下商店街を抜けて、その先にある水の流れるモニュメントが特徴的な広場にたどり着く。
優斗は、まだいなかった。
近くの柱に背中を預け、周りの様子を見ながら優斗を待つ。
待ち合わせの定番場所なだけあって周りには美咲と同じように待つ人で溢れていた。
「スマホ……」
時計表示は9時50分。
待ち合わせは10時なのであと10分。
まだ来ないだろうとスマホを覗いていたら視界の端によく知った姿が見えた。
「美咲早いね」
「優斗も今日は早いね」
「楽しみで寝られなかったから」
「そ……そっか!」
照れることなくまっすぐ言う姿に何故か自分が照れてしまう。
こういう時、どういう反応をするのが正解なのか。
「どうする?とりあえずこの付近見て回る?」
「そうだね。あ、よかったら楽器屋行ってもいい?弦買いたくて」
「もちろんいいよ。いつもの6階のところ?」
「うん」
2人は並びながら目的地を目指す。
優斗の背中にあるベースケース、移動するのに重そうだ。