独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。

「ベース、持って動くの大変じゃない?」
「慣れてるから大丈夫だよ」
「まぁそうだよね」
 たわいのない会話、普段通り。
 そのはずなのに美咲の心は顔を合わせた時からそわそわと少し落ち着かない。

 原因はこの前のデートでの優斗の言葉。
 
 ——『今は美咲との時間を楽しみたい』

 優斗の気持ちがわからない。
 あの日の優斗はいつも違って、私のことを意識しているように思えた。
 自分の勘違いかもしれない、そう思おうとしていたのに。

 ——『楽しみで寝られなかったから』

 彼の言葉一つ一つに意味を感じてしまい心臓が落ち着かなかった。

(優斗に何があったの……?!)
 
 今までそんな素振りもなかったのに。
 急に様子が変わりすぎてついていけていない。
 
「美咲?」
「はい?!」
「……聞いてなかったでしょ」
「ご、ごめん」
 優斗は「仕方ないなー」と手を伸ばし、美咲の指に自分の指を絡めて握る。
 
「へぁ!?」
 
 いきなりすぎる行動に思わず変な声が出た。

 
「デート中、手を繋いでてくれるなら許すよ」
 
 イタズラに笑うその表情は美咲の心をかき乱す。

「な……な……」
「ふふっ、行こう」
 なにも言えず固まる美咲を面白いと楽しむように笑いながら、優斗は進む。
 人で溢れかえる歩道を2人は恋人のように手を繋ぎ、楽器屋へと向かった。
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