独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。

「そういえば今日のチケット、翼にも売ったからあいつも今日来るんじゃね?」
「翼が?」
「ああ。」
 
 翼が来るってことは美咲のことを見つけるかもしれない。
 俺のライブ中、またあいつが美咲に……いや、この前の様子を見るにそれはないか。

「……。」

 それでも、自分のライブ中に2人が目の前でいつものようにベタベタとしていたら俺は前みたいに取り繕うことができるだろうか。
 こんなにも美咲を思う気持ちが溢れてしまっている俺に、できるだろうか。
 優斗は美咲に内緒で買ったペアネックレスをシャツの中から取り出し握る。
 彼女の首にも今、俺と同じものがついている。
 そう思うだけで少し心が満たされた。

(美咲……)

 あんなに上手く抑え込んでいた想いはもう止めることができない。
 少しずつ、でも確実に、美咲の想いを自分へ向けさせる。
 彼女が気づかないほどにゆっくりと、翼への想いが溶けてしまう様に。

 自分のために。
 自分の心を満たす為だけに。
 俺は美咲が欲しいと思ってしまう。
 
 服の内側にしまっていたペアネックレスをそのまま外に出す。
 
 ……客席からでもよく見えるように。

(美咲のネックレス……翼なら気付くだろう)
 
 それでもいい。
 そのほうが都合もいい。
 憶測で勝手に暴走してしまえばいいんだ。

 自分にこんな黒い感情が生まれるなんて思いもしなかった。
 由紀から美咲と翼が仲直りをしたと聞いて焦っているのかもしれない。
 きっと、彼女は翼のことを突き離せないから。

 優斗は静かにベースの弦を(はじ)いた。
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