独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 *

 ライブハウス開場数分前。

 美咲は1人で入口の列に並ぶ、列には20人ほど並んでいた。
 出演者の友達や家族も多いのか所々で身内話が聞こえてくる。
 
「ねぇ!今日荒木のとこのバンド、荒木出られないから後輩くんが変わって出るらしいよ!」
「え、後輩って誰?」
「河合優斗くん!ほら、2年の穏やかそうなイケメンくん!」
「え、うっそ。あの子ベースもできるの?メロすぎるでしょ」
「やばいよね〜惚れちゃうかも」
 
 自分の知り合いの話に意識せず聞き耳を立ててしまった。
 優斗の大学の人たちだろうか?
 大学でも優斗は人気なようだった。
 
(まぁ、高校でもモテてたもんなぁ優斗)

 視線を下に向けると優斗にもらったネックレスが目に入った。
 
 (どうしてそんな彼が自分に——)
 
 ハートのチャームを指で撫でる。

 列が進み始める。
 開場したようだ。
 チャームから手を離して前へ進む。
 チケットを受付の人に渡して扉を抜けるとコンクリートの湿った香りと控えめにフロアを照らす明かり、誰も立っていない機材と楽器だけが置かれたステージが美咲を迎えた。

 何度もこのライブハウス(ハコ)にはきたことがある美咲は慣れた様子でドリンクカウンターに飲み物を取りに向かう。
 
 ドリンクチケットをカウンターに置く。
「ジンジャーエールで」
「はーい、美咲ちゃん今日は客なんだね?」
「優斗が今日出るんですよ。それ見にきました」
「優斗くんが?……あーなんか怪我して出られなくなった子がいるって言ってたような」
「松田さん、月末のライブはいますか?私たちその日出るんです」
「いるよ、楽しみにしてるね。はい、ジンジャーエール」
「ありがとうございます」

 顔馴染みの店員に別れを告げ、他の客にカウンターを譲る。
 ドリンクを持ってどのあたりに行こうか悩んだ。
 
(優斗は多分正面から左に来るからそのあたりにいようかな)

 前へと進んで優斗が立つであろうステージの左側で待つことにした。
 開演は18時30分。
 今は18時10分なのでまだ20分はある。
 
 もらったジンジャーエールを飲みながらスマホを触って時間を潰す。
 時間感覚がおかしくなるからか、思った以上に早く開演の時間になった。
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