独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。

第17話 勘違いのその先


「あれ、翼!なんでここに……」
 
 名前を呼ばれて振り返ると翼がいた。
 さっき確実に名前を呼んだはずなのに、当の本人は固まったまま動かない。

「……翼?」

 顔を覗き込もうと首を(かたむ)ける。
 それよりも前に翼が何か言った。

「……たのかよ」
「?ごめん、なんて言ったか聞こえなくて」
「優斗と、付き合ったのかよ」
「え?!」

 なんで翼がそんな勘違いを起こしているのか。
 普通に遊んでこうしてライブに来ただけなのに何故。
 
 翼は美咲に近づいて手を伸ばしネックレスを掴む。
 
 酷く歪んだ表情で苦しそうに彼は言った。

()()。優斗とペアだろ?」

 壊れてしまったように、酷い顔で翼は笑う。
 
「違っ!これは今気づいて!」

 知らなかった。
 優斗が同じものを着けていたなんて。
 本当に今さっき知ったばかりなのに、翼にその事実は伝わらない。

 フロアに優斗たちの音が響いている。
 美咲と翼の間にだけ沈黙が流れていた。

「あ、翼じゃん。お!美咲ちゃんも!久しぶり〜♡」
 空気を読まずに演奏を終えた将吾が2人に声をかける。
 翼になんて説明したらいいのか困っているのに、将吾も加わって余計にどう説明すべきかわからない。
「将吾くん……久しぶり」
「美咲ちゃん、高校以来じゃね?大学違うし。あ、でも翼たちと今はバンド組んでるんだっけ?ねぇ、連絡アカ教えてよ。ライブとか翼たちの大学での話もしたいし」
 
 人のパーソナルスペースを無視してグイグイと近づいてくる将吾に引き気味だった。
 ただでさえ翼と話の途中なのに……。
 
「にしても相変わらず可愛い顔してるよね〜ほっぺとかも柔らかそ〜」
 遠慮なく頬を触ろうとしてくる将吾の手に反射的に目を瞑る。
「……っ」
 
 ……待っていても、その手が美咲の頬に触れることはなかった。

 恐る恐る目を開けると翼が将吾の腕を掴んで止めている。
「あ?なんだよ翼」
「……美咲と話してる途中だ」

 翼はその場を離れるように美咲の手首を強く掴んで連れて行く。
 優斗たちの演奏が響く中、2人はライブハウスを抜け出した。
 暗くなった空にネオンが輝く街中を翼に引っ張られるまま、美咲は歩き続けた。
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