独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。

  *

 辺りは完全に暗く、飲み屋の看板が明るく夜道を照らしていた。
 長い髪を前に下ろして首筋の印を少しでも隠す。
 太ももはショートパンツのせいで隠れないが、なるべく早く歩いてその場所で留まらないようにした。

 
 もう、無理だった。
 
 
 どうしたらいいのか完全にわからなくなってしまった。
 私の声は翼には届かない。

 胸から熱いものが込み上げてきて瞳を濡らす。
 ダメだ、こんなところで泣いたら。
 変な子だと思われてしまう。
 
 美咲は必死に耐えた。

 (……家に帰りたい。)
 
 けど、こんな身体でなんて説明したらいいの……?
 どうにもできずにひたすら歩いているとスマホの通知音が鳴った。
 画面には【中里由紀】の文字。

 [美咲、どこにいる?優斗から翼が美咲をどこかに連れて行って連絡が取れないって聞いた。心配してる。連絡ちょうだい]

 そのメッセージで救われた気持ちになった。
 美咲はポツポツと返信を打ち込む。

 [由紀……もうどうしたらいいかわからないよ……]
 
 返信は着信になってすぐ返ってきた。
 泣きそうな声で電話に出る。

「美咲!?今どこ?!優斗と2人で翼と美咲のこと探してて」
「どこかわかんない……」
「え!?」
「翼に連れてこられたところだからどこかわからないの……」

 由紀は一瞬黙る、がすぐに「位置情報、送れる?」と聞いてくれた。
 スマホを操作して由紀に自分の位置を送る。
 
「待ってて、すぐ行く」と言い残し、通話は切れた。
 道路の端にうずくまり、由紀たちが来るのを待つ。
 
 
 気付けば空は曇り、雨が降り出していた。
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