独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 *

 優斗の家は街中から大学方面へ向かった位置にある。
 家庭の事情で1人暮らしている優斗はここなら気兼ねなく過ごせるだろうと思い、美咲と由紀を自分の家に招いた。
 
「どうぞ、何もない家だけど飲み物くらいなら出せるよ」
「美咲、大丈夫?ゆっくりでいいから」
「ありがとう……」

 玄関を進んで右にキッチン、仕切りを抜けるとリビングと横へと続く扉が1つ。
 優斗の家はシンプルで綺麗に片付けられていた。

 案内されるまま、リビングのソファーに座る。
 美咲の隣には由紀が座った。

「飲み物、何がいい?ミルクティーでいいかな?」
「うん……」
「わかった、由紀は?」
「コーヒーある?」
「ああ。待ってて」
 優斗はキッチンに向かった。
 由紀と2人、リビングに沈黙が流れる。
 
「……話したくなかったら話さなくていいよ。」
 由紀は優しく言った。
 
「美咲のことだから、美咲が決めたらいい。だけど今の状態で1人にはできないから……側には居させて」
「……うん」
 美咲はどうするべきか悩んでいた。

 翼のこと、これからのこと。
 こんな状態のまま、あと半月もないライブで演奏なんてできるのか。
 由紀と優斗が翼のした事を知ったら、絶対に無理だ。

 隠し事をしながら美咲は由紀に話し始める。
 
「翼が……優斗のネックレスと私のネックレスを見て、付き合ってるって勘違いしちゃって……それでまた喧嘩になって……違うって言ってるのに全然話聞いてくれなくて」

 ぽろぽろと、抑えていた涙が流れてしまった。

 
「翼のこと、好きって思ってたのに……もう無理だよって思って……」

 
「翼のこと置いて逃げてきちゃった……」
 
 
 心の線が切れたように、美咲は声を上げて泣きじゃくる。
 キッチンから飲み物を持ってきた優斗はそれを見つめて立ち尽くしたまま、由紀は彼女の背中を優しくさすった。

「もう、わかんない……もう嫌だ……」


 
 美咲はそのまま数分間、泣き続けた。
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