独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 
 美咲はその言葉の意味がわかったのか、優斗を見つめた。
「俺が翼を勘違いさせるようなことしなければ、美咲は傷つかずに済んだ」
「……」
 美咲は言葉を選んでいるのか、口を開きかけて閉じる。
 少しの間の後、ゆっくりと話し始めた。

「優斗は悪くないよ。……お揃いなのはびっくりしたけど、私のために選んでくれたのは嬉しかったよ。翼のことは……今回のことがなくても、きっといつか起きてたと……思う」
 美咲の表情は悲しみに満ちていた。
「でも……」
 
「優斗にも非はあるけど、根本的に美咲の話を聞こうとしない翼が悪いでしょ」
 由紀は強い口調で優斗に言った。

 それはそうだ。
 そう、だけど……。
 俺は自分の罪悪感を美咲に許されることで消そうとしてるのかもしれない。
 自分勝手な行動に翼のことを言えないと思った。

「美咲、家には帰れそう?今22時だから帰るなら送ってくよ?」
「……家には……」
 どうしよう、と悩む美咲の姿に優斗は帰れない理由を察する。
 由紀は気づいてるかわからないが、今の状態で家に帰るのは家族に変な誤解を与えると心配してるのだろう。

 当たり前だった。
 娘があちこちに男の名残をつけて帰ってきたら突っ込まれるに決まっている。
 
「帰りたくない?……本当ならうちの家に泊めてあげたいけど、今は都合が悪くて……」
「なら、俺の家に泊まる?」

 自分でもすごいことを言っていると思った。
「え、優斗の家?……でも……」
「男の家に女の子泊めるって……それ危なくない?」
「なら、由紀も泊まっていけばいいだろ」
「そうしたいけど出来ないから困ってる」

 断られるのも、由紀の言葉も理解できる。
 でもそれしか思いつかなかった。
 美咲さえ良ければ……と思っただけ。
 優斗は奥に(いだ)く自分の独占欲に見て見ぬ振りをして言い訳する。

 
 美咲は悩んでいた。
 
 家に帰れない事情と俺に対する信頼を天秤にかけて考えているようだった。
 
「……優斗、迷惑じゃない?」
「そんなわけない。美咲がいいならいつでも泊まっていいよ」
「……ふふっいつでもって、変なの」

 俺は信用してもらえたようだ。
 安心したのか美咲は少し微笑む。
 由紀もその様子に安堵して美咲を抱きしめた。

「ごめんね、一緒に泊まれなくて。優斗がなんかしてきたらすぐに電話するんだよ。殴りに行くから」
 冗談のように言っているが、確実に本気だと思った。

「あはは、優斗はそんなことしないよ。ありがとう、由紀」

 
 由紀は愛おしそうに美咲を優しく撫でた。
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