独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。

第20話 誠実と欲望


「私帰るけど、何かあったらすぐに連絡してね?」
 
 優斗の家の玄関、由紀は靴を履きながら美咲に言った。

「うん。本当にありがとう、由紀」
「親友なんだから、当たり前でしょ」

 由紀の優しさはまた私の涙腺を緩ませる。
 これ以上涙が流れてしまわないように堪えた。

 由紀に手を振って見送る。
 玄関の扉がゆっくりと閉まった。
 
 後ろにいた優斗が腕を伸ばして鍵を閉める。
 前屈みの姿勢に体が触れてしまいそうだった。

「……夜ご飯、食べた?」
「あ……食べてない」
「俺作るよ。パスタなんてどう?」
 優斗は腕まくりをしてキッチンへと向かう。
 私もその後ろをついて歩いた。

「優斗、料理するんだね」
「一人暮らし2年目だからね。まぁ、簡単なものしかできないけど」
 手慣れた様子でフライパンを取り出し、水を入れて火をつける。
 鍋じゃなくてフライパンって辺りが男の料理感があって面白い。
「ふふ、何パスタ?」
「うーん、どれがいい?」
「?」

 ガサゴソと優斗は棚から袋を何個か出す。
 その袋にはカルボナーラ、ペペロンチーノ、ツナマヨ、明太子とパスタにつける味が書かれていた。
「これぞ文明の力」
「和えるだけのやつだ!」
「これが美味しいんだよ。好きなやつ選んで」
 
 そう言って優斗から袋を渡された。
 どれを選ぼう、ペペロンチーノはニンニク臭くなるから無しかなぁ。
 寝る時、優斗に匂いがいっちゃうし。

 (…………。)

 ふと気がつく。
 今日、私は優斗の部屋で一緒に寝るのかと。

「…………っ!!!!!」

 わかっていた。わかっていたんだけど実感なく選択した泊まりに、今更現実が押し寄せる。
 な、なんて選択をしたんだろう!?!

 美咲は現状を再確認してあわあわと慌て出す。
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