独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 軽音部で組むことになったバンド、優斗と由紀はくじ引きで決まったメンバーだった。

 それが大学生になった今も続いている。
 高校では吹奏楽部に所属していた美咲、翼が部室に彼女を頻繁に呼んだりしなければ優斗たちと関わることはなかったはずだ。
 小さなきっかけを始まりに、彼女の交友は広がっていく。
 別々の大学に上がった時、自分の知らない時間が増えることはとても怖かった。
 誰かに取られたら——と嫌なことばかりが頭に浮かんで不安になって。
 その不安を少しでも解消したくて美咲をバンドに誘った。
 1分でも1秒でも多く、美咲の時間が欲しかったから。
 
 でも、翼の不安をいい意味で裏切るように、大学へ行っても美咲は変わらなかった。
 優斗と話していても、由紀と話していても。
 それ以外の人間と話しても彼女の感情を揺さぶるのは自分。
 美咲の特別は自分だけで、自分だけが彼女の体に跡を残すことができる。
 自分だけのものだと信じていた。
 優斗はそれを理解しているように、美咲とは一線引いていると思っていたんだ。
 
 翼は思考を巡らせるたびにイライラが募った。
 (……今更気持ちを出しやがって)
 他にも女は沢山いる。
 美咲以外にも、優斗に沢山女は寄ってきているはずなのに。
「……っ」
 翼は頭を掻きむしる。
「ふざけんな……っ!」と止めどなく溢れ出る感情に任せて、ギターをかき鳴らした。
 
 コツ、コツとドラムスティックが重なるたびに由紀の膝の上で軽い音を立てる。
 座ったまま翼の荒れる様子を見つめる彼女はその音に隠れて呟く。
「……翼はいつも美咲のことばかりだね」

 その苦しそうな声は翼には届かない。
< 8 / 93 >

この作品をシェア

pagetop