独占欲の強い幼馴染はいつも私を噛みたがる。
 *

「優斗の車、初めて乗った……」
「あれ?そうだっけ」

 2人は美咲の家へ向かっていた。
 家族は全員出払っていて家には誰もいない。
 見られずに荷物を持ちだせる、絶好のタイミングだった。

 母には昨日から由紀の家に泊まると連絡してあり、そのまま1週間泊まると話した。
 二つ返事で了承してくれて特に問題もない。
 由紀にもメッセージで連絡済みだった。

「もう着くよ。美咲が支度してる間は車で待ってる」
「うん、ありがとう」

 住宅街にある一軒家の前に車をつける。
 
「すぐ戻るね」
 美咲は荷物を持ってくるため、家へと入っていった。
 車内で一人、優斗はエンジンを切って美咲を待つ。
 見慣れない住宅街を眺めていると少し離れたところに見覚えのある横顔を見つけた。

「翼……」

 気力なく歩いている翼。
 彼の心が深刻な状況になっているのは見ているだけでわかった。
 優斗は降りることなく、車内から翼を見つめ続ける。
 
 彼はこちらを見ずにそのまま住宅街へ消えていった。

「……遠慮はしないって、言ったからな」
 見えなくなった翼に呟く。

 
「ごめん、待たせたかな?」

 助手席の扉が開く。
 荷物を抱えた美咲は何も知らず、優斗の横で微笑んでいた。
「全然待ってないよ。荷物、後ろに置こうか?」
「ありがとう」

 優斗は何事もなかったように笑顔を取り繕う。
 翼を見かけたことは美咲には言わなかった。
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