こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「……で、調子に乗って編んでたら毛糸が足りなくなってしまったんだよ」
「それ、どうしたんですか?」
「余っていたほかの色を継ぎ足した。新しいデザインになると思ったんだが」

 言葉を切るので、彩羅はそのまま続きを待つ。
「現代人には早すぎた。SNSに上げたら、コメントに『斬新ですね!』とか、フォロワーさんの気遣いがあふれていていたたまれなくなった」
 おどけた様子に、彩羅は思わずくすっと笑う。

 ああ、やっぱり青空羊さんだ。
 男性と出かけるなんてと思ってどきどきしていたが、そんなふうに思う必要なんてなかったんだ。
 そう思った矢先。
 信号待ちで、彼が顔をこちらに向けてくる。

「そういえばさ」
「はい」

「敬語、やめてくれないな」
「そういえばそうですね」
 やめようと話したのはだいぶ前な気がする。

「今日はプライベートなんだし、敬語は禁止」
「え?」

「約束、な?」
 サングラスをずらし、万葉が流し目を送ってくる。

 瞬間、彩羅の心臓が止まりそうになった。
 その流し目、ずるい!

 ばくばくと鼓動が早くなり、倒れそうなくらいに顔が熱くなる。
 信号が変わり、彼はサングラスをかけ直して車を発進させる。
 彩羅は再び緊張に包まれ、箱根に着くまで心臓が暴れるのを必死に抑え込んでいた。
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