こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
途中のレストランで食事をしてから再び車を走らせ、箱根の山中の、ガラスが有名な美術館に到着した。
冬が近づきつつある現在、クリスマスを意識した飾りがあちこちに施されている。
チケットは万葉が購入してくれて、展示室に向かった。
彼女らを最初に出迎えたのは十八世紀のロココ調のドレス。
「すごい迫力」
マネキンが着ているそれは繊細な柄が織り込まれ、当時の人気の産地のレースがふんだんに使われている。刺繍も手が込んでおり、造花もたっぷり、ビーズも随所に縫い込まれている。
「重そう」
「体力つきそうだな」
ドレスを見たとは思えない自分たちの感想に、お互いくすくす笑う。
「こっちのも綺麗ですよ」
「綺麗……だけど。敬語」
指摘され、あ、と彩羅は口を覆う。
「使わないようにがんばりま……がんばる」
「先は長そうだ」
ははは、と笑われて彩羅はむうっと口をとがらせる。
平日のせいか人が少なく、ふたりはゆったりと見て回った。
レースの起源が古代の漁網だという説を見て驚き、中世ヨーロッパの職人の手仕事に感心し、機械で編むようになった近代の技術に舌を巻いた。
レース編みの長いウェディングベールには驚嘆が隠せない。
自分で編んだレースでウェディングベールにできたらどれだけ嬉しいだろう。だが、気の遠くなる作業に違いない。