こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 近代のレースには人工の宝石を編みこんであるものもあり、この時代から人工宝石があったのか、と驚いた。繊細かつ緻密な手仕事は、どれだけ根気が必要だっただろう。
「レースって、もはやジュエリーの域ですね」
「レースがジュエリーか……いいな、その考え方」

 万葉はレースを見てしばらく考え込み、それからまたふたりで歩き出す。
 どれも目の保養になったが、見終わるころにはすっかり疲れていた。

「少し休もうか」
「はい」
 彼の提案で併設のカフェレストランに行く。

 店内もおしゃれで、彩羅は顔を輝かせた。
 木のはりが露出した天井にはシャンデリアがきらめき、全体的にクラシックな仕上がりで、落ち着く。
 大きな窓からは手入れされた庭園が一望でき、クリスタルを飾られたツリーが輝いている。

 ケーキセットを注文してしばらくすると、バイオリンを持った男性が現れた。
 まさか。
 思う間にも、彼は演奏を始める。

 生演奏でお茶するなんて初めて。
 彩羅はどきどきするが、万葉に驚いた様子はない。

「今日はつきあってくれてありがとう」
「私こそ、ありがとうござ……ありがとう」
 言い直すと、ふっと万葉が笑みをこぼす。

 今日見たどんなレースより素敵。
 まぶしさに、彩羅は思わず目をそらした。その視線の先には着物の女性がいる。
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