こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~



 美術館を出たあとは都内のカジュアルなレストランで食事をして、自宅マンションに送ってもらった。
 車を降りるときにはまた彼がドアを開けてくれて、降りた彩羅は彼に頭を下げる。
「今日はなにからなにまでありがとうございました」
「こちらこそ。つきあってくれて嬉しいよ」
 つきあう、なんて言葉を言われてどきっとする。
 いちいちこんな言葉に反応するなんて。もう大人なんだからしっかりしろ。
 彩羅は自分に言い聞かせる。
 今日はまったくもってなにかがおかしい。
 見上げた万葉の笑顔はいつも以上に輝いていて、夜とは思えないほどだ。
 名残惜しくてマンションに足を向けられず、彩羅はそれでも今日の別れを告げるために顔を彼に向ける。
 ばちっと目が合った瞬間、彼が言った。
「君が見ているのは、青空羊か万葉か、どちらなのか」
「え?」
 彩羅は目を丸くして彼を見た。
「青空羊は編み物仲間、そうだろう?」
「はい」
 何を言っているのだろう。彩羅は少し首をかしげる。
「俺は青空羊のままでいたくない」
 彼の目はまっすぐに彩羅を見つめている。
「これからは青空羊でも専務でもなく、万葉を……俺を見てほしい」
 どういうこと?
 彩羅は動揺し、彼をじっと見つめる。
 万葉は熱のこもったまなざしでまっすぐに彩羅を見つめ返す。
 だから、彩羅もさすがに理解した。
 今まで考えないようにしてきた。
 だが。
 なんとも言えない喜びが胸にわいてくる。
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