こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~

 ガチャン!
 コップが割れる大きな音が店内に響き渡る。
「申し訳ございません!」
 彩羅は謝罪の声を上げ、大小の破片をひろい、ほうきとちりとりで細かな破片を掃きとる。
「彩羅っち、大丈夫?」
「うん。ありがとう」
 紙にくるんで燃えないゴミに入れ、彩羅はため息をつく。
 昨夜の『俺を見てほしい』の意味を考え、昨夜はなかなか眠れなかった。今日もなんども頭に浮かび、仕事に集中しきれない。
 あれは告白でいいのだろうか。本当はどういう意味で言ったのだろう。
 万葉を見ると答えたことは、告白を受け入れたことになるのだろうか。
 あのとき、自分は彼を男性として見るのを考えてみる、というつもりで答えたのだけど、彼はどう受け止めたのだろうか。
 だけど、確認のために聞くなんてできるわけがない。
「ああもう、私のばか」
 彼も彼だ。告白なら告白で、もっとはっきりしてくれたらいいのに。
「萌木さん、大丈夫? 悩み事ならいつでも相談にのるからね」
「ありがとうございます」
 拓斗に礼を言いながら、彼ならもっとスマートに進めただろうな、と思う。
 告白するならもっと景観のいい場所で、雰囲気を盛り上げて。
 それはそれで素敵だろうが、だけど万葉は万葉だからいいのであって。
 もうこれは万葉が好きということで合っているだろうか。そう思うのだが、今ひとつ自分の中でしっくりこなくて踏み切れない。
< 116 / 212 >

この作品をシェア

pagetop