こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「人件費は安く済むけど、輸送費がかかるよね?」
「それを加味しても経費が節減できる。中国も東南アジアも人件費が高騰しているからな……だが、それだけじゃない」
 彩羅は黙って続きを待った。
「この事業は現地の女性の貢献を目指している。あちらは女性の人権がまだまだないがしろにされている。女性を積極的に採用し、経済的な自立を支援することで彼女らの立場の向上をはかる」
「お互いにメリットがあるようにしてるんだ」
「それが企業のあり方だと思っている」
 彼の話は興味深くて、食事中にもいろいろ質問しながら聞いた。
 インドはもはや中国を抜いて人口が世界第一位だが、いまひとつ「世界の工場」になりきれないのはどうしてか、工場を建設した国の政権とどうつきあうか。
 堅い話ばかりではない。
 会食で会う他社の重役は高齢な方が多く、病気で食事制限を受けている方がいるので、食事でも気遣わなければならないことが多いこと。
 若いころ、接待ゴルフでは最初は相手よりへたくそに、中盤に相手をいったん追い抜き、最後には相手に勝たせていい気持ちにさせるという配慮をしていたこと。
 毎回その手を使っていたら相手にばれて「失礼だ!」と怒鳴られて冷や汗をかいたこと。
 身近なものからグローバルな話まで話題が豊富で、飽きることがない。と同時に彼の視座の高さに圧倒された。
 気が付くともう食事が終わっていた。
 お会計は万葉が持ってくれたのだが、いつの間に支払ったのか彩羅にはわからない。
 マンションの下まで送ってもらって、車を降りる前にお土産を渡される。
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