こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「君の趣味に合うといいのだが。それとこれも。俺が編んだんだが、よかったら」
「ありがとう」
 彩羅は嬉しさ半分、申し訳なさ半分でふたつの紙袋を受け取る。
 彼に会えて嬉しいし、自分のために選んでくれたのも嬉しい。
 だけどいつも自分はもらうばかりだ。教えてもらって助けてもらってプレゼントをもらって。
 彼のスマホに着信がある。
「すまない」
 彼は断ってスマホに出る。
「good evening.Kazuha speaking」
 英語だ、と彩羅はちょっと驚いた。
 聞くのは失礼だと思うものの、車内にいるからどうしても聞こえてしまう。
 耳がスパイダーだとかロータスだとかの単語を拾い、文学作品の蜘蛛の糸が頭に浮かんだ。そんなわけがないだろうから、聞き間違いかもしれない。もう一度ちゃんと英語を勉強したほうがいいな、とぼんやり思う。
「悪い、待たせた」
 電話を切った彼に言われ、彩羅はにこっと笑う。
「大丈夫です。こちらこそ、今日はありがとう」
「本当に君といると癒される。仕事の会食で行く店は格式張って気疲れするからな」
「相手の方に楽しんでいただかなくてはならないですものね」
「加えて、選んだ店のレベルでこちらの経済状態を深読みされることがある。例えば出張でも、どのレベルのホテルのどの階に泊まっているかで人間を測られ、取引に影響する。読み合いなんだ」
 そんなささいなことが影響するんだ、と彩羅はあっけにとられた。
「だからこんなカジュアルに楽しめるのが嬉しいんだ」
 ん?
 笑みを浮かべている彩羅の口の端がひきつる。
 あのお店がカジュアル?
 疑問は、だけど口にはできない。
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