こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 思えばレストランでの仕草も彼はスマートで上品。ほかのお客さんもみな洗練されたたたずまいだった。
 一方の自分は、気を付けてはいたけれど上品とは言いがたかったはず。
 彼は所作も優雅で美しかったが、自分はどうだったか。彼との会話が楽しくてまったく覚えていない。
 見ている世界もまったく違う。自分は日常や自分の将来の心配をしているが、彼は世界を見据えている。
 そもそもアッパー階層の人とは、金銭面だけではなくそういった価値観も違うのだろう。
「俺を見てほしいって言われたけど……」
 御曹司であり専務として世界で活躍する彼と、しがないカフェバイトの自分。
彼には『俺を見てほしい』と言われたが、彼にはどう思われるのだろう。
 スマホを手に、今日のお礼を伝える。
「……シャワー浴びてこよ」
 切り替えるように口に出して、彩羅はお風呂場に向かった。



 翌日、彩羅は昨日のできごとを忘れるかのように必死に働いた。
 ランチタイムを終えて、お店が落ち着いてきたころだった。
「ちょっと」
 呼び止められ、彩羅は立ち止まった。
「さっき買ったこれ、色が微妙に違うんだけど」
 声をかけてきた客は毛糸を指さしている。
「失礼します」
 断りを入れて毛糸を束ねている紙の商品情報を見てみると、ロットナンバーが違っていた。
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