こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
帰る途中に駅ビルで編み物検定の本を買い、手芸ショップに寄る。
検定の練習用に毛糸を買おうとコーナーに行き、色とりどりのそれに目を奪われる。
質感、触感が違うし、それぞれに良さがある。
半端ものコーナーを見てみると、水色の毛糸が目に入った。
春の空のような、ちょっとくすんだ水色だ。
「青空羊さんみたい」
明るいけれど、明るすぎずに落ち着いた色合い。温かな肌触り。
羊の名にふさわしい白もあった。
「どうしよう、どっちも欲しくなっちゃう」
うーん、と迷って結局両方買ってしまった。練習用にはピンクを買った。
帰ったら洋画を流しながら編み物検定の勉強だ。
過去の課題の実技の編み図を見て編んでみる。
久しぶりの編み物は、やはり楽しい。どんどん編みあがっていく達成感はなにものにも代えがたい。
ニット検定が終わったらまた自分のものを編んでみようかな。羊さん……糸条さんにもなにかプレゼントできるといいけど。
やはり編み物はいい。やればやっただけ成果が出る。
コツコツ積み重ねた結果が、形になるのが嬉しい。
丁寧にやれば丁寧な結果が、雑に編めば雑な結果が、如実に表れる。
努力が形になるのは、やはり嬉しい。現実の仕事では必ずしも努力が形になるとは限らない。
……時として、結果だけを奪われる。
思い出し、手が止まってしまった。
「あの人はもういないんだから」
彩羅は自分に言い聞かせ、再び手を動かした。