こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~

***

「もう編み物やらないのかよ」
 不満そうな慶太の声に、月菜はじろっと彼を見た。
 呼ばれて行った彼の部屋。
 物があふれて掃除もろくにしていないようだ。
 どこに座ればいいのかわからずに立っていたら、責めるようにそう言われたのだ。
「前にも言ったよね、彩羅のことがショックでもう編めないの」
「なんだよ、俺、同僚に自慢してたのに」
 慶太は当てつけのように盛大にため息をつく。
「私、帰る」
 月菜はバッグを持って立ち上がる。
「待てよ、掃除くらいしてけよ」
「自分でやりなさいよ!」
 月菜は怒りを込めて玄関のドアを閉め、さっさと歩いていく。
 気晴らしに駅ビルに百均が目についた。通路に面した場所で、大々的に毛糸コーナーが展開されている。
「こんなもの。私だってできるわよ」
 ピンクの毛糸とかぎ針、編み方の本を持ってレジに行く。
 家に帰るとすぐに取り出し、ソファに座って毛糸を手に本を開く。
< 127 / 212 >

この作品をシェア

pagetop