こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「冷めちゃったな。温めなおすよ」
「いい。お前の料理は冷めてもうまい」
 万葉はパスタを綺麗に巻いて口に運ぶ。
「お仕事、大変そうですね」
「本当に大変なのは現場だよ。いつもみんなには感謝している」
「土日も働いてるだろ? 重役ってめんどくさ。俺はずっと現場にいたいな」
 言われた万葉はちらりと拓斗を見た。
「そういうわけにもいかないだろ。フォレストのあとを継ぐんだろ?」
「それ」
 拓斗はうんざりとため息をこぼす。
「え?」
「彩羅っち、知らなかった?」
 マリリンが尋ねてきて、頷く。
「俺、いわゆる御曹司。フォレストグループ会長の孫で、社長の息子」
「え……」
 目を真ん丸にする彩羅に、拓斗は、くくく、と笑いをもらす。
「萌木さんのその顔が見たくて、今まで黙ってた」
「意地悪ですね……」
「こいつは大学の頃からそうだった」
 万葉が苦笑をもらす。
 御曹司の万葉が通う大学なら、ほかの御曹司が通っていてもおかしくない。そこで出会った友達なら、つまりそういうことだ。
 自分はそれなりの大学に行き、同じような階層の人間とばかり接してきた。
 彼も同じように、アッパー層の人たちとばかり接してきたのだろう。
 本来、自分たちは出会うはずがなかったのだ。
 つながってはいけない糸がつながってしまった、なんてことはないのだろうか。
 ナポリタンの赤い色を見ながら、彩羅は複雑な気持ちになっていた。
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