こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「寝かせておいてあげたいね。彩羅っち、大丈夫そ?」
「大丈夫」
 正直言って、重たい。が、彼の頭を落としてはいけないと思うから、身動きがとれない。
 拓斗もそれまで以上に慎重な運転をしてくれて、無事にマリリンを家に送り届けた。
 次は彩羅の番だ。
「まだ寝てるね」
「はい」
 万葉はすやすやと寝息を立てている。バックミラーに映る彼の寝顔は無防備で、つい守ってあげたくなる。
「よく店に来てたけど、スケジュールはきつかったと思うよ」
「やっぱり……」
 重役は対外業務のための会食が多いと聞く。もちろん会社の代表としていくのだから、責任はとんでもなく重いに違いない。そんな中で六時半から七時までの三十分を捻出するのは大変だっただろう。仕事を早めに終わらせて、会食までのわずかな時間に店に寄っていたのかもしれない。そうとうきついスケジュールのように思える。
 だというのに、彼の来店をいつも期待してしまっていた。
「そうまでして君に会いたかったってことかな」
 拓斗の言葉に、彩羅は答えられなかった。
 もし本当にそうならどれだけ嬉しいだろう。
 俺を見てほしい。そう言われたのだから、期待していいんだよね?
 そう思ってちらりと万葉を見る。
 彩羅の位置からは絹のような黒い髪しか見えず、だから彩羅はそっとため息をついた。
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