こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「変な意味じゃなくて、その、ネットで話をしていて楽しかったので」
「あ、そういうことですね。私も羊さんが好きですよ」
 彩羅がにっこりと返すと、彼は目を丸くして、それから恥ずかしげに目を伏せる。

「意外に意地悪をおっしゃいますね」
「驚かされたので、お返しです」
 ふふ、と笑うと彼も苦笑をこぼす。
 自分との縁が続くことを望んでくれたのが、素直に嬉しい。

 緊張などとっくに吹き飛んでいた。
 ここにいるのはもう華糸と青空羊でしかない。
 毛糸や編み物のあるあるなど話して盛り上がり、時間はあっという間に過ぎていった。

「もうこんな時間ですね」
 腕時計を見て彼が言う。
「はやっ!」
 慶太と一緒にいるときですら、時間がこんなに早く感じたことはない。

「仕事もこれくらい早く時間が過ぎてくれたらいいのに」
「お仕事はなにを?」
 聞かれて、失敗した、と思う。もうすぐ辞めるから答えにくい。だが今はまだ。

「派遣で事務です。羊さんは?」
 なんて答えるのかな、と思ったら。
「会社員です」
 にっこりと笑って答えられた。
 専務とは言いにくいのかな、と彩羅は思いながら答える。

「いいなあ。私はもうすぐ無職なんですよ」
 楽しかったせいか、つい口が緩んでいた。
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