こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「おやめになるんですか」
「はい」

 失敗した、これでは事情を聴かれるかな。失恋したせいだと思われるかな。どう答えよう、聞かれる前にしゃべって質問されないようにしなくちゃ。
 彩羅はだから、まくしたてる。

「いい年して無職なんて情けないですよね。信念もなにもないままアラサーで、いつまでもふらふらしてて。もっとしっかりしたいです。せめて正社員になりたくて」
 こんな自虐は答えづらいだろうか。もっと前向きなこと言わなくちゃ。

「もともとカフェが好きでカフェチェーンで働いていたんです。会社が倒産して、それで派遣になって。次はまたカフェで働こうと思います」
「カフェですか」
 彼の目がきらっと光った。

「でしたら、ご紹介させてください」
「え?」
 彩羅はきょとんとした。

「新規オープンした店でフルタイムのバイトを募集しています。正社員登用もあります。華糸さんなら自信を持って推薦できます」
「で、でも」
 意外すぎる展開で、彩羅はうろたえた。

「次が見つかるまでのつなぎでもかまいません。彩羅さんにピッタリだと思います。経験者は店側も助かります」
「待ってください」

 いきなり言われてもすぐには答えられない。
 とはいえ、昨日見た求人ではカフェでの正社員募集はなかった。居酒屋やファミレスなら正社員の募集はあったが、やはりカフェがいい。
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