こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
 扉が開くと、待ち構えていた人たちが一斉に入場し、お目当てのブースに向かう。
 シジョウクラフトにも多くの客が訪れた。

「すみません、フェア限定発売の毛糸ってこれですよね」
 毛糸を手にした女性に聞かれ、月菜は嫌そうに顔をしかめた。

「たぶんそうですよ」
「たぶん?」
 女性が眉をひそめると。

「そうです、それが限定の毛糸です。新開発の軽くて暖かい繊維を使ってます」
 慶太が横からわりこんで説明し、女性は安心したように買って行った。

「邪魔すんなら帰れよ」
「お望み通り帰ってやるわよ」
 慶太に言い返し、出口に向かいかけ、ステージすそに万葉がいるのを見つけた。眉間にしわを寄せて部長をにらみつけている。

「遅延の理由を聞いているんじゃない。いつ届くのかと聞いている」
「急いでますが、なんとも……」
「最速予想と最遅(さいち)予想を言え」
 万葉の声にはいら立ちが混じっている。

「どれだけ急いでも十五分から二十分かかります。遅い場合は一時間ほどかと」
 あきらめたように部長が言う。
「到着まで高瀬氏とのトークでつなぐとして、構成を組み直さなくてはな」
 万葉が眉間のしわを深くする。

「いいアイディアがあります!」
 たたっと駆け寄った月菜はぎろりと射ぬかれ、びくっと立ち止まる。
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