こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「あの、高瀬さんの編み物の本、楽しませてもらってます! お会いできて嬉しいです!」
「ありがとうございます」
 幸次は小首をかしげながらにっこりと笑みを返し、コーヒーを口にして、目を軽く見開いた。

「あら。イタリアで飲んで以来のおいしさね」
「ありがとうございます、私が淹れたんです!」
 万葉も一口飲み、彩羅に愛しげに目をむける。

「上達したな。拓斗にひけをとらない」
「ありがとうございます……!」
 彩羅はお盆を抱きしめてお礼を言ったのち、すぐに立ち去って行った。その足どりは地についていない。

 なによ、媚びうっちゃって。

「君、なにやってるんだ。すみません、お邪魔いたしました」
 部長が万葉と幸次に謝罪して、月菜をその場から追い立てる。

 私がいなくなって後悔したらいいのに。
 月菜はむかむかしながら会場をあとにした。

***

 出店しているカフェではマリリンがお会計をして、彩羅と拓斗がコーヒーを淹れる。
 彩羅はあふれでる喜びを抑えきれずににこやかに接客した。

 キングに自分が淹れたコーヒーを出すことができただけでも嬉しいのに、ほめられた。万葉にも認められた。練習したかいがある。
 幸次の前を辞した万葉は今は強面の専務に戻り、部長以下、社員は緊張に包まれている。

 本当の彼は優しくていい人なのに。照れた笑顔なんてとびきりかわいい。
 知らない人たちに教えて回りたいし、そうしたら万葉だって強面の鎧を着なくていい気がする。
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