こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
「ひどいよ、友達だと思ってたのに。そういうこと言うなんて」
 月菜が急に泣きそうな声になり、彩羅はいぶかしげに彼女を見た。
「あなたが編んだことにしてあげてもいいけど、でもやっぱりこれ以上は無理だよ」
「私は返してって言ってるだけよ」
「ごめんなさい。私はもうなにもできません、今まで許そうと思って頑張ってきたけど……」
「許すってなによ!」
 我慢しきれず、カッとして彩羅は言い返す。
「いつも私に頼んできたのは月菜じゃないの。睡眠時間削って編んだことだってなんどもあるのに。仕事だって手伝ってきたよね!? 私の仕事をあとまわしにして手伝って、先に月菜が定時で帰っても、文句言わなかったよね!?」
 彩羅の声は興奮で震えていた。今までこんなふうに月菜に言い返したことなんてない。
「ごめんなさい、許してください!」
「謝ったって無理! 返して!」
「ごめんなさい!」
 月菜がことさらに大声で謝罪を叫び、彩羅ははっとした。
 気が付けば、会社から出てきた人たちがじろじろと自分たちを見ている。
「ごめんなさい、許してください。土下座でもなんでもしますから!」
 月菜が地面に膝をつくにあたり、彩羅はいっそう動揺した。
「やめて、そういうことじゃないの」
 彩羅は慌てて彼女を起こそうとするが、月菜はスマホを地面において正座している。
「ごめんなさい」
 今やふたりは注目の的。
正座をしている月菜と、その前に立つ自分。
 咎める目や興味本位の目、たくさんの視線が突き刺さる。
 耐え切れず、彩羅は逃げ出した。
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