こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
『おめでとう! 私は落ちたよ。受けてたんだね』
『行けるかどうかわからなかったから、内緒にしてた。会場で声をかけなくて悪い。集中してたようだから、邪魔したくなかった。君なら次で合格できるよ』
励まされるが、まったく心は浮上しない。
ありがとう、とスタンプを返してネットニュースを見る。
と、急上昇の印のついたものがあった。編み物エンペラー、ニット検定首席合格、と書かれている。
タップすると彼の写真付きで記事が出た。
『編み物フェアでエンペラーの座に輝いた糸条紡績の専務、糸条万葉氏が、ニット検定でも活躍! 一級を首席で合格し、文部科学大臣賞を受賞』
「え、すごい!」
首席合格で受賞するのは知っていたが、万葉がそうなるとは。
「どんどん差がついちゃう」
そもそも彼との間には大きな差があった。ネットがあったから交差しただけで、本来は交わるはずのない糸と糸だったとしか思えない。
糸条紡績のアカウントも彼の合格と受賞を伝え、『おめでとう!』であふれている。
彩羅はそっと画面を閉じた。
お祝いしたいのに、コメントをつける気にはなれない。自分のSNSを投稿する気にもなれない。
文部科学大臣賞だなんて、メッセージでは教えてもらえなかった。
落選した自分を気遣ったのかもしれない。だけど。
彩羅はやるせなく目を閉じる。
青空羊と仲良く話すのが楽しかった。
編み物が好き。
それだけでつながった関係。性別も立場もなにも関係ない友達。