こわもて専務の秘密の趣味 ~御曹司は愛する人を運命の糸でからめとる~
閉め作業も掃除も終えて、彩羅は掃除道具をロッカーに入れてカウンターに戻る。
「掃除終わりました」
「了解。休憩しようか」
拓斗の返事に、彩羅は首をかしげた。
いつもならこれで上がりだ。休憩と言ってはいるが、話があるということなのだろう。
拓斗が淹れてくれたカフェオレをテーブルに運び、ふたりで向かいあって座る。
「お疲れ。ビールじゃないのが残念だけど」
カップを掲げられ、彩羅も持ち上げ、ふたりでかちんと合わせる。
「店長が手ずから淹れてくれたカフェオレですから、特別です。お疲れさまでした」
淹れたてだから熱くて、ふーふーと息を吹きかけてから一口を飲む。
苦みとミルクのまろやかさが、同時に口の中に広がった。彼のように優しい味。
「ここのところ、落ち着かないね」
「……はい」
彩羅はカップをソーサーに戻す。かちん、と音がして、そういえば万葉は食器の音を一切立てなかったな、と思い出す。
「聞いていいかな」
気遣いに満ちた柔らかな声。
「はい」
「とられたポーチの件。大丈夫?」
「ダメでした」
彩羅は笑顔を作ろうとしたが、その頬はこわばっている。
それから、ぽつりぽつりと説明する。